定価 | 4,620(本体4,200+税10%) |
ページ数 | 160 |
サイズ | A5 |
著者 | 河村 哲也 |
付録 | プログラムソース |
発売 | 山海堂 |
ISBNコード | 4-381-01688-2 |
河川の流れは土木に現れる流体現象の中で,もっとも重要でかつ取り扱いの難しいもののひとつである.重要であるというのは,河川はわれわれの生活に密着しており,河川の流れを調べることにより,護岸工事の必要性を検討したり,橋をかける場合の位置選定に重要な情報が得られるなどとともに,洪水時の影響評価や防災対策など治水に役立つからである.一方,難しいといった意味は,河川は流体力学的に見た場合,複雑な領域における自由表面問題になっているというだけでなく,河川の流れが土砂を運ぶことによって河床が変動するという要素も合わせもっているからである.
河川の流れを解析する場合,古典的な等流,不等流計算,不定流計算とともに,最近では2次元計算にとどまらず,第一原理から出発する3次元計算まで行われるようになってきた.これは,コンピュータの性能の向上に負うところが大きい.もちろん,3次元計算ではコンピュータに対する負荷も大きく,たとえば少ない格子で計算を行うと,2次元計算に比べてかえって精度の悪い結果しか得られないことも多い.すなわち,問題によって最適な計算法があるため,3次元計算ができるからといって2次元計算が不必要になったわけではない.同様に不等流計算や不定流計算も必要である.
本書はこのような点を踏まえて,河川の流れのいろいろな計算方法を紹介しているが,内容は以下のとおりである.第1章では流体の基礎方程式であるナビエ・ストークス方程式から出発して,河川の基礎方程式を導いている.第2章では,偏微分方程式の差分解法の基礎事項をまとめているが,特に2次元解析で取り扱われる偏微分方程式が数学的には波動型に属することに着目して,波動方程式(移流方程式)の解法を中心に述べている.第3章では2章の応用として,2章で述べた数値計算法を実際の河川の基礎方程式に適用している.第4章では3次元の非圧縮性流れの数値解法を述べ,河川の3次元流れの解析への導入を行っている.この場合,自由境界を含む流れになるため,MAC法を中心に解説するとともに計算例やプログラムも示している.第5章では3章の発展として河床変動の計算法,および4章の発展として洗掘問題を取り上げている.最後に付録Aでは複雑な形状の河川を格子分割する簡便な方法および2章の補足を述べ,さらに付録Bでは参考のため二次元河床変動計算のサンプルプログラムを載せている.